ふるさとの山へ

山で出会ったおじさんやおばさんに聞く質問がある。
「いちばん好きな山はどこですか?」
その質問のダントツ1位は、わがふるさと新潟と福島と山形の県境に広がる飯豊連峰だ。

9月中旬、北極圏の大地を歩き終わって、ストックホルムの安宿に泊まっていたとき、いつか写真でみたなだらかな起伏が大地を覆うようにウネウネと延々と広がる飯豊の山々を思い出していた。
帰国したら、まっさきに飯豊の山へいこうと思った。
荒々しい北極圏の山ではなく、優しく命を包み込むような飯豊の山に身を置こうと。

結論からいうと、飯豊連峰は想像以上だった。

トゲトゲした険しい山が連なる北アルプスが好き。

女体のようなエロチックな曲線を描いて続く稜線がずーっと見渡せる飯豊連峰はもっと好きだ。


登山道までのアクセスが激烈に悪いので人が少ない。


ビールやおみやげを売っている興ざめな山小屋がないのもいい。
あるのは避難小屋だけ。
原則的に避難小屋に泊まることになっているが、テン場もある。


水場がたくさんあって、水がうまい。


ときどき出会う登山客はみんなキモチのいいひとばかり。


森が豊か。


動物の気配がする。
撮影/大森千歳


空が青い。


人里から離れすぎている。


登山口には温泉がある。


プライベートでいこうと思って、いろいろと計画を立てていたらひょんなことからこの飯豊山行は仕事になった。
メンバーは、モデルの大森千歳、森山敦志(アニキ)、矢島慎一フォトグラファー。
ひとりで黙々と歩くのもいいけれど、気の知れた仲間と歩くのもまたいいもんだ。
来年の「PEAKS」秋号に掲載予定。
忘れないうちに原稿書かないと。
いや忘れられないくらい強烈にいい山旅だった。

今度は、5月の残雪期、夏の沢を歩こう。