フィールドライフ 北欧Backpacking 続き

北欧の北極圏トレイル450キロを歩いたあと、リトセンからバスで数時間ほどいった街のキャンプ場で静養していた。
足が回復したら、再び歩こうと思っていたのだ。
しかし、足の調子は一向に直らなかった。

足を引きづりながら、寝台列車で夜をあかし、スウェーデンの首都ストックホルムにたどりついた。
川に浮かぶ船を改造した安宿のドミトリーに飛び込んでチェックインし、アエロフロートのオフィスに行って、フライトを3日後の便に変更した。

美しいと言われるストックホルムの街並はぼくにはモノクロに見えた。

足が痛いので、街歩きもろくにできない。
ドミトリーのベッドでひっそり「荒野へ in to the wild」を再読していると隣のベッドに座っているオランダ青年に声をかけられた。

「その映画みた? すごくよかったよ。とくに自然の映像がね。ぼくも来年はアラスカを旅しようと思っているんだ」

北極圏トレイルとアラスカが北極圏というキーワードで結びつき、ぼくらは近くのバーへくりだした。

3週間ぶりに飲むビールは、きいた。
なぜかシラフよりも酔っぱらったほうが英語がすんなり頭に入ってくる。

何時まで、何杯ビールを飲んだかは覚えていない。
でも、コレだけは覚えている。
彼と話すことでぼくの心は吹っ切れて、晴れ晴れしていた。
人種や言葉が違っても、ぼくと同じ気持ちの若者が世界中にいるんだという事実に安堵感を覚えたのかもしれない。

翌日もベッドで本を読んで過ごした。
目を閉じると荒涼とした北欧の大地がまぶたの裏に浮かび上がった。
そしたら突然、繊細で豊かな日本の自然がものすごく恋しくなってしまった。

あの広葉樹と針葉樹、地比類が入り乱れるしっとりと濃いい自然こそがぼくの原点なのだと思った。

世界の大地を歩くことは、日本の大地を知るということ。